フラットライナーズ(1990年 アメリカ)
医大生たちがわざと臨死状態になることで、死後の世界を垣間見ようとする。チキンレースのようにどんどん臨死時間が長くなっていく中、戻ってきた者には異常な体験が待っていた…厳密にはホラーとは言えませんが、新しい側面から恐怖に襲われる姿を描いていると思います。あと、キャスティングが思えば豪華。
もう26年も前なんですね。彼らが若くて、きれいで、時の流れを感じました(って自分もそれだけ歳とってるんだ…)。
キーファー・サザーランド(ネルソン役)⇒ 今じゃ『24』のジャック・バウアーで有名
ジュリア・ロバーツ(レイチェル役)⇒ 説明不要の大女優
ケヴィン・ベーコン(デヴィッド役)⇒ すっかり立派なバイプレイヤーですが、この頃はまだアイドル
ウィリアム・ボールドウィン(ジョー役)⇒ スケベ役が多い…もちろんこの作品も
オリヴァー・プラット(ステックル役)⇒ 意外といろんな作品で見ますよ
薬品や医療器具を使って、一時的に死んだ状態になり、仲間に蘇生してもらう。最初にその方法を考案したネルソンが誘った時には、デヴィッドもレイチェルも乗り気じゃなかった。が、ネルソンが臨死状態に入ると、デヴィッドが「俺が蘇生させる」って…で、見事蘇生させるんですね。レイチェルもなんだかんだ手伝ってます。
一方死んだネルソン(わずか1分ほどですが)は何を見ていたかと言うと…子供の時分の思い出? 一人の男の子を仲間たちと追い回している。現実に戻ってきたネルソンは数日後、その少年ビリーに出くわし、なぜか痛めつけられるはめに。
次に臨死に挑んだのはジョー。アンという婚約者がいながら、大勢の女性と寝て、かつその様子をビデオで隠し撮りしているというサイテーなヤツです(笑。彼の臨死ではもやもやとした数々の女性のイメージが…実際幸せな気持ちだったようです(ある意味男性には天国?)。が、ジョーも現実世界で突然テレビなどのモニターに女性とのビデオが映り、最中の女性がこちらを見つめてきたり…見えているのはジョーだけのようですが。
レイチェルは何度も次は自分がやるって言うんだけど、ジョーに続いてデヴィッドが。こんなバカバカしいことにストッパーをかけたい…とデヴィッドは言ってるけれど、案外自分も興味があるんですね。ネルソンたちが何を見たのか。で、デヴィッドは臨死状態の中、女の子を見ます。彼女はウィニー。小学校でデヴィッドは彼女をいじめてたのです。現実に戻ったデヴィッドは電車の中でウィニーに口汚くののしられます。
ネルソンの様子がおかしかった原因に気づいたデヴィッドは嫌な予感がして仲間のところへ戻りますが…すでにレイチェルが臨死状態に入った後でした。
(以下ネタバレ)
要はみんな肝心なことは仲間に隠して言わなかったんですね(言えなかったのか)。ジョーは隠し撮りビデオがアンにばれて婚約破棄となり(自業自得)、デヴィッドはウィニーに会いに行き、許しを得ます。ようするに奥底に隠してきた罪悪感にさいなまれるようになったわけです。臨死…という異常体験を経たからなのかはわかりません。
気分が軽くなったデヴィッドに諭され、レイチェルも父親が自殺したのは自分のせいじゃないと受け入れることができたようです(けっこうヘビーな体験ですよ、画で見ると)。一方、自分で自分に生傷を作ってしまうほど、ネルソンが苛まれている罪悪とは…少年ビリーはネルソンたちがいじめている最中に樹から落ちて死んでしまったのです。デヴィッドのように謝りに行くこともできないわけです。
ネルソンは死んで詫びるしかないと思ったのか、一人で臨死状態に入ってしまう。デヴィッドたちは追いつきますが、すでに10分近く経っている。必死で蘇生させるが…反応はない。
一方、臨死状態のネルソン。子供に戻り、今度はビリーたちに追いかけられています。ビリーと全く同じように樹の上に追いつめられて、石を投げられ…バランスを崩して落ちていく…大人に戻ったネルソンは地面に叩きつけられ…
「神様、これが罰だと言うのなら謝るから、謝るだけじゃダメなのか?」どうしてもあきらめきれないデヴィッドが最後に蘇生器を叩きつけるようにネルソンの胸に当てると…心電図に反応が!
ネルソンが見上げると、ビリーが微笑んでいる。手を振って、光の方へ消えていった…許された(とネルソンが思った)のでしょうね。現世から呼ぶ声に向かって、ネルソンは走っていく。生き返ったネルソンを囲んで…ハッピーエンド?
ん~、まぁ、人によっては何てことない作品なのかもしれませんが、あらためて見ても面白かったです。辛らつな見方をすれば、自己満足の世界ですよね。「許された」と思うことって大事なことなんでしょうね。結局のところ、彼らが襲われた怪異は追いつめられた自らが見せた幻だったのですが、死後の世界の描写や幻覚の描写はなかなか幻想的で面白いと思います。