ゴーン・ガール(2014年 アメリカ)
ああ、怖かった。でも何が怖いかを言うとネタバレになってしまうという…紹介しづらい作品(笑。公開時から話題だったので、すでに方々でネタバレが書かれていたのですが…堪えて見なくてよかった。正確にはミステリーであって、ホラーではない(人が一人死ぬけど)。久々に面白かったデヴィッド・フィンチャー作品。
ゴーン・ガール 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2015/04/03
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログを見る
雑誌記者ニック・ダンの妻エイミーが5回目の結婚記念日に失踪。ニックは警察に協力し、著名な作家である義母とともに記者会見まで行うが、家の中から見つかるニックに不利な証拠の数々…創作教室の若い教え子との浮気も発覚し、世論はニックがエイミーを殺害したのでは?と疑いはじめる…
この時点で1時間。そう、この映画の欠点(不満?)は、長すぎること。でも2時間30分は昨今まあ、珍しくもないか。全て重要な場面に見えて(笑、いつもなら退屈な場面は少し飛ばしながら見ることもあるんですけど(←なんてヤツ)、この作品に限ってはそれができなかった(笑。最後まで見ると、「あそこはいらないんじゃないか」って部分もあったけど。
夫婦と言えども、元は他人同士。相手のことを全て知っていると思っていたのは自分だけで… という話です。エイミーに一体何があったのか?彼女の書いていた日記には、ニックとだんだんすれ違っていく気持ち、暴力を振るわれ、身の危険を感じて銃を購入していたことが綴られていく……
(以下感想を含めのネタバレ。作品を見たい人は絶対に読まないよう)
思えば、布石はある。エイミーの母親メアリーベスは、エイミーをモデルとした”完璧な(アメージング)エイミー”シリーズで有名なベストセラー作家。実際の自分は本とは真逆で、親の期待を裏切り続けてきた…とエイミーが語る場面がある。こともあろうに最新作は作中のエイミーが結婚した…その出版記念パーティに出席させられた(なぜ白い服を着てこなかった?とメアリーベスに言われる)エイミーはファンや記者のうんざりする質問に答えなければならず…その窮地を救ったニックのプロポーズ。この時は本当にニックが理想の相手に見えたに違いない。だから結婚当初はうまくいっていた。ニックの母親が末期がんになり、看病のため、彼の故郷へ引っ込んでからも…。
ちょうど映画が1時間を過ぎたとき、エイミーの告白がはじまる。
きっかけは夫の浮気だったのかもしれないが、その前から充分夫に「何もかもをむしりとられている」と感じはじめている。自分は夫に好かれるいい女を演じてきたというのに「ニックは怠け、願い下げの男になりはてた」。
だからその罰を受け、自分を殺した殺人犯として投獄されるのだ(数週間後に実際自殺しようとしていた)。
…恐ろしいです。普通はそこまで考えない。サイコパスである。恋人(夫)を自分の思い通りにしたい、コントロールマニアなのだ。相手の性格や何を考えているかなんて関係ない。だから尊重する気持ちもない。想像でしかないが、メアリーベスもコントロールマニアなのでは?(失踪後はニックの行動までコントロールしようとしている節がある)。しかもメアリーベスは無自覚なのが手に負えない。
エイミーは実に周到に失踪(殺害)偽装を行う。自ら血を採取し、床にぶちまけ(荒く掃除し)、殴り殺されたように見せかける。偽の日記まで用意し、刑事に疑念を抱かせず、見つけさせる。クレジットカードで夫のものを買い物しまくり、無職なのに借金していたと印象付ける。近所の妊婦と仲良くなり(心の中では「ばか女」呼ばわりしてるw)、尿を採取し、医者に送りつけ、妊娠していた事実を作り上げる。とにかくニックを「妊娠した妻を邪魔にして殺した浮気夫」にするために、完璧に作り上げられた数々の証拠。
ニックに勝ち目はないのか? 優秀な弁護士ボルトと双子の妹マーゴだけが彼の味方。世間はみんな哀れな美しい妻エイミーの味方。あ、あとエイミーにレイプ犯呼ばわりされ、8年も苦渋をなめた元彼トミーも別か。
ところがエイミーは死なない。というか死ぬつもりなんてなかったのかもしれない。身分を偽り、住んでいたコテージの隣のヤンキー女たちに虎の子の現金(100万ドル近く?) を奪われ、頼ったのは…高校時代につきあっていたデジー。金持ちである。当時エイミーに振られ、彼女のベッドで自殺を図ったとして、接近禁止令を出されていた男。実際はトミーと同様、はめられたのかもしれないが、再会してからの彼の熱っぽい態度を見ると違うのかもしれない。
ちょっと粘着質な男だけど、とにかく金持ちである。夫に苦しめられてきた弱った女を演じ、デジーの豪奢な別荘にかくまってもらうことに成功。が、またも、エイミーの心境に変化が。TVで妻を愛していると真摯に訴えるニックを見たから(笑。
そう、そこに理想の夫をまた見出したから!
で、デジーをどうしたかというと…自分を誘拐監禁して、連日強姦したストーカーに仕立て上げ、喉笛を掻っ切る(ヒェー!)。そして血だらけで必死になって脱出してきた哀れな犠牲者の姿で、ニックの元へ戻ってくる。
もちろんニックはトミーから話を聞いたりしていたので、自己防衛のためとはいえ、ベッドに縛りつけられてたのに、どうやって喉を切れたんだ?と言っている。もう疑いの塊です。当然だ。
ひとまずニックは、喜ぶ周囲に流されるように、ツライ思いをした妻を気遣う優しい夫を演じ続けるが、それもエイミーに言われたからで(もうこの辺からまたコントロールされかけてる)…でも真実も言いたい。葛藤する。
そこへエイミーのダメ押し。以前に(人工妊娠しようと?)採取していたニックの精子を使い、妊娠したのだ。「世間にどう言われようと関係ない。君と別れる」と言うニックに「子供はあなたを憎むでしょうね」とエイミー。
子供への責任感か…奇跡の再会から新しい家族を授かった夫婦を演じることに同意するニックだった。
オイ、いいのか!? 数年後、絶対殺されるよ、ニック!
最初、エイミーが自己愛の塊かと思ってたけど、自分も愛せてないよね。今のエイミーは演じているエイミー。でも上にも書いたように、メアリーベスがエイミーを創ったんだとしたら…もう本当の自分が何かわからなくなってるのかも。でも少なくともコテージでの彼女の生活は気楽そうだった…。エイミー役のロザムンド・パイク、すごかったです。数々の賞をノミネートおよび受賞してます。