オペラ座 血の喝采(1988年 イタリア)
他のと比べて低評価なアルジェント作品ですが…改めて見たら、面白いじゃない。いろいろ粗があるのは前提として見てほしいのですが(笑。『オペラ座の怪人』なのかな…と思いきや、ヒロインは恐ろしい目に遭わされる(一方的に愛される点では一緒…)。
主人公ベティは母親は有名だけど、自身はまだ芽の出ないオペラ歌手。そこへ吉報が…舞台『マクベス』 のマクベス夫人役マーラが事故にあったので、急遽代役を頼まれたのだ。そして見事代役を演じきったベティ。途中、ライトが落ち、照明係が何者かに殺されるアクシデントはあったのだが…。
楽屋に一本のバラを持って訪ねてきた男。ファンだと言うのでサインをしてあげたら、刑事だとわかり、とたんに不機嫌になるベティ。そもそも『マクベス』を上演すると不幸が起こるというのは業界で有名らしく(四谷怪談みたいですね)、さきほど訪ねてきたのは、事件の捜査で来たサンティーニ警部だったのだ。
初日の大成功を祝ってのパーティを出ると、ベティは助監督でボーイフレンドのステファノと彼の叔父の家でベッドを共にしていた。彼が少し部屋を離れた隙に、黒手袋に黒覆面(笑)の何者かが彼女を柱に縛り上げ、目の下に針を何本も貼り付ける。「しっかり見ていろ。お前は本当は淫乱なのだ」と耳元で囁く。戻ったステファノはベティの姿に驚く間もなく、謎の覆面男に惨殺される。まぶたに針が刺さるので、目を閉じることができず、ベティはその無残な最期を見続けるしかなかった。しかし、覆面男はベティの縄と解き、いずこへと立ち去っていった。
ベティはとりあえず、ステファノの件を警察には電話したが、恐ろしさで呆然としながら街中をさまよう。そんな彼女を拾ったのは舞台監督のマルコ。マルコは以前ホラー映画監督だったこともあり、今回の舞台でも本物のカラスを何羽も使うなど、マーラを怒らせる原因にもなった、破天荒な男。だが意外にもマルコは優しく、怯えるベティを家に送り届け、しっかり戸締りするよう伝えて出て行く。
その夜、ベティの衣装が何者かに切り刻まれるが、そばのカラス舎からカラスが抜け出し、犯人を襲う。怒った犯人が何羽か、ハサミで切り殺す。騒ぎに気づいて警備員が来た頃には犯人は逃げ出していた。
怒ったのは衣装デザイナーのジュリアも同じ。急いで修正しなければ…と直していると、覚えのない金のブレスレットが引っかかっているのに気づく。犯人の落し物ではと思ったジュリアは訪ねてきたベティとともにルーペを探す。金のブレスレットになにか文字が刻まれているのだが、読めなかったからだ。が、ここでもルーペをみつけたジュリアが文字を読もうとしている間に、覆面男が現れ、ベティを縛り上げる。もちろん両目の下には針(笑。そして、ベティの目の前で男とジュリアが格闘。ブレスレットを渡すまいと逃げたジュリアだったが、哀れ、倒され、ハサミでグサリ。しかも倒れた拍子に彼女にブレスレットを飲み込まれたと気づいた男がしたことといえば…(グエ~)。そうそう、ジュリアは格闘の際、男の覆面を取り、驚く場面が。が、それを伝えられることもなく、ベティの見ている前で殺されてしまう。ベティには犯人の顔が見えなかったのはお約束。
とうとうベティは自分がされていたことをサンティーニに打ち明ける。応援の刑事ソアベをよこすから、家から出ないようにと言われ、家で待っていると、ソアベ刑事がやってきたので、目薬を差しててよく見えないくせに、家に上げてしまうベティ(お馬鹿)。
その後、マネージャーのミラが訪ねてきて、下でソアベと名乗る刑事と会ったと言われ、混乱するベティ。一気に恐怖のどん底に。奥の部屋にいるのは誰? なんだかんだ、偽のソアベ刑事は出て行った気配があり、安心していると、またもインターホンが。ミラがドアスコープから覗くと、警察手帳を見せたり、ソアベだと知らせようとしている。が、急に銃口がドアスコープに向けられ…
(以下ほぼラストまでネタバレます)
それにしても、二コロディ(ミラ役)の扱いがどんどん酷くなっていく…。前作『フェノミナ』ではチンパンジーと本気で格闘させられ、顔に傷を負ってしまったらしいし、今回の眼球に弾丸貫通シーンも失明してもおかしくないほどの危ない方法で撮ったらしい。アルジェントと公私にわたるパートナーで、娘までいるのにね。妙な部分にこだわる彼の癖を理解はしつつも、彼女も気の毒すぎる…
とりあえずこだわりの場面は必見ですよ
ミラも殺され、ソアベ刑事も殺され、絶対絶命のベティ。それを助けてくれたのは、同じアパートに住む少女。ベティのファンである少女の案内するまま、排気口を通り、少女の家へ逃げる(この場面はけっこうハラハラする?)。が、すぐに少女の母親が出てきて、ベティは外へ追い出されてしまった。彼女の行くところは楽屋しかなかった。オペラ座にはマルコがいて、「明日の公演で犯人がわかる」とわけのわからないことを言い出す。
楽屋で眠る彼女はいつもの悪夢を見ていた。幼い彼女が見ている向こうに縛り上げられた母親と殺されんとするもう一人の女性…。襲っているのはあの覆面男! アルジェントにはあるあるのトラウマですね。
翌日の公演。メチャメチャになります(笑。だって、客席に一斉にカラスを放すんですから! フツ~やらないっしょ! そしてカラスたちは仲間を殺した憎き犯人を襲います。襲われたのは…サンティーニ警部。片目を抉られてしまうのは…アルジェントの趣味ですね。まあ、ベティに「見ろ見ろ」強要した代わりに自分が見えなくなっちゃう(片目ですが)。
なんだかんだ、ベティはサンティーニから逃げ延び、サンティーニは焼死。スイスの美しい山小屋で、マルコとなんだかいい雰囲気のベティ。と・こ・ろ・が…
このスイスの場面はいいですね。ラストのトカゲのカットは必見です。でも世界公開版はいろいろカットされまくりで、台無しだったらしい(興行成績も散々)。
ちなみにサンティーニとベティの母親がどういう関係かイマイチわからなかった。もうちょい、過去場面撮ってもよかったのでは???