オルカ(1977年 アメリカ・イタリア)
子供心に「シャチ=怖い」を植えつけてくれた作品だったので、あらためて見てみたらば…人間ドラマの部分が妙に長い、シャチの描写も魅力的な良作でした。
『ジョーズ(1975)』のヒットを受けて乱発された亜流ものの1作と位置づけられているようですが…サメが得体の知れない怪物として描かれているのに対し、当作品のシャチは家族への復讐に燃える…妙に人間臭いヤツです。
(名優リチャード・ハリスが演じる)漁師ノーラン。(同じく名女優シャーロット・ランプリング演ずる)海洋学者レイチェルの警告を無視し、水族館に売ろうとシャチを生け捕りにしようとするが、失敗し、雌とお腹にいた子供もろとも死なせてしまう。怒り狂う父親と思しきシャチは、ノーランが停泊していた港町の漁師たちに被害を及ぼし、漁師たちはノーランにそのシャチを何とかするよう迫る……
(見ようかな…という人にとっては以下ネタバレ)
じつはノーランは昔、妊娠中の妻が搬送されている途中、飲酒運転の車に追突され、妻と子を同時に失っているというヒサンな過去があったのです。…正直とってつけたような設定ですが、ノーランは雌のシャチを死なせるつもりはなく、ひどく後悔していることが描かれます。が、父親シャチは許してくれず、ノーランは落とし前をつけるべく、シャチと共に沖へ出て行く。
…なぜかそれに同行する人間が多い(笑。父親シャチは冷たい北海(?)へ向かい、氷山をぶつけられ船は沈没。それまでに二人、やられてますが。落ちてきた氷山の下敷きになって、死んでしまうネイティブアメリカンのウミラク…なぜにあんたが死ななあかんの?(ホントに何の罪も無い) たくさんの犠牲がノーランの肩に重くのしかかります。いつの間にやら、それを支えて傍らにいるレイチェル。最後は氷の上と下で熾烈な闘いを繰り広げるノーランとシャチ。海へ落とされたノーラン、シャチのでけ~尻尾によって力いっぱい氷山に叩きつけられ死亡。しかし、事前にノーランの放った銛が刺さったシャチももう無事ではないでしょう。まさに命をかけた復讐劇。呆然と立ち尽くすレイチェルの元に救助のヘリが近づいていく(ウミラクが要請していたのだ)。
ホラーとは言いがたいかもしれません(雌のシャチのお腹から胎児がゴロリと飛び出る場面はグロイですが…)。多くの人が喰われますが、直接的な描写はほとんどなく、ホラーを期待すると物足りないと思います。が、ただの亜流作品とは言わせない、力強さを個人的には感じました。