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テナント/恐怖を借りた男(1976年 フランス)

前住人だった女性が謎の投身自殺を遂げた部屋へ入居した男。女性の荷物が残されたままの部屋、近隣住人の騒音への異常なほどの干渉……次第に精神的に追いつめられていく。 もやもやした恐怖なので、はっきりしないのが苦手な人には向かない作品かも。

テナント/恐怖を借りた男 [DVD]

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言語は英語ですが、舞台はパリだし、主人公トレルコフスキーポーランド系の名前だしで、常にヨーロッパの香り(笑)がするのはさすがポランスキー監督(名前も似てる)。しかも監督本人が主人公を熱演しています。

古いアパートの一室を借りようとしたトレルコフスキーだが、神経質な家主から投身自殺したシモーヌがまだ入院しているから何とも言えないと渋られ、その病院に見舞いに行きます。全身包帯だらけのシモーヌ、たまたま見舞いに訪れた友人ステラとトレルコフスキーを見ると、異様な悲鳴を上げる。これがまた「キャー」とかじゃなくて、唸るような感じで怖い。結局まともに話せない状態で、気落ちするステラを慰めがてら映画館など行くうちに親しくなります(なぜか『燃えよドラゴン』を見ながらイチャついている)。ステラもシモーヌの自殺には全く思い当たる節がないという。

シモーヌはその日の夕刻に死亡。そのまま越してきたトレルコフスキー。シモーヌの私物、めっちゃある状態なんですけど! 葬儀にも出ているんだから親族に引き取ってもらえばいいのに。

でもって、引越し祝いのパーティで友人たちを呼んで騒いでいたら、さっそく家主の爺さんから苦情が。静かにしていると言うけど、たしかに夜中の1時に男女数人で来ていたら普通に話しててもうるさいよ(笑)。

その後もいろいろ騒音苦情などで、彼を訪ねてくる近隣住民たち。そしてシモーヌの友人も。視線を感じ、窓の外を見ると向かいの棟のトイレの窓から誰かがじっと見つめている。いつも同じじゃなくて、いろんな人。アパート近くのカフェでは、なぜかいつもシモーヌが注文していたものを出そうとする店主たち。

シモーヌはもういないのにシモーヌの影に悩まされていくトレルコフスキーだった……

(以下ネタバレ

 

 

 

たぶんトレルコフスキーはもともと人がいいというか、人によく思われたい性格で、例えばシモーヌに片想いしていた男を一晩中慰めたりしている。その晩、部屋に泥棒に入られたというのに家主に警察に行くなと言われただけで諦めてるし! 

たしかに洋服ダンスの裏の壁に抜いた歯が隠されてたりとかトイレの窓から見える人影とか不気味は不気味なんだけど、気にしない人にとってはそんなに気にすることじゃない(笑)。実際ステラも「気にしない」って言ってたし。

……とまあ、こういう感じで特に実害(強盗以外)はないんだけど、トレルコフスキーはだんだん変になっていくんですわ。気づけばシモーヌが残したマニキュアを塗ったり、化粧をしたり、ドレスを着て、カツラまでかぶってる! 彼自身は周囲が自分をシモーヌに仕立て上げ、同じように自殺させるつもりだという被害妄想に陥っていて、後半、彼の視点と現実が交錯し、この辺りは少しホラーではあります。

ラスト、トレルコフスキーはシモーヌになりきった姿で窓から同じ場所へ飛び降ります。大怪我だけどまだ生きていて、心配し歩み寄る住人たちから慄き、逃げる様子は完全にイッちゃってました。再度部屋から飛び降り、序盤のシモーヌと同じ包帯だらけの姿でベッドに横たわるトレルコフスキー。訪ねてきたステラとシモーヌに片想いしていた男が一瞬ステラと自分の姿に見えたトレルコフスキーはシモーヌのような悲鳴を上げる

 

私自身はなんだかんだポランスキー監督の作品を見ていて、これと似た系統っぽい、こちらの作品もいつか見たいと熱望しています。  

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