ファンハウス 惨劇の館(1981年 アメリカ)*ノベライズ感想が主
トビー・フーパー監督のB級ホラー。じつはディーン・R・クーンツのノベライズを先に読んでいて、一応映画も見てみようと思い、見た次第…だが、酷い、ほんっとにただのスラッシャーだ。
カーニバルのファンハウス(オバケ屋敷)で、気味の悪いフリークスにティーンエイジャー4人が次々襲われるだけ。主人公のエイミーもギャーギャー叫んでいるだけで、大した活躍はしない(でも助かります)。しかもブスなんだよね…。友達のリズの方があきらかに美人。唯一よかったのは、ラストシーンかな。ボロボロのエイミーが夜明けのカーニバル(もう片付けはじめてる)のアトラクションの間をふらふらと歩き去るところ。…これじゃぁ、小説化を任されたクーンツが困ったのもわかる気がする(←って、言ってないって)。
さて、では小説について。映画ではフリークとファンハウスの持ち主のオヤジが親子だということぐらいしか描かれていなかったのを、このオヤジ(コンラッド)の壮大な復讐物語に仕上げています。
コンラッドの妻エレンが、生後6ヶ月の赤ん坊を殺してしまう…という衝撃のプロローグから物語ははじまります。たとえ子供が恐ろしい化け物だったとしても、コンラッドは子供を愛していた。エレンを殺してやりたいほどだったが、あえてそうせず、恐ろしい復讐を思いつきます。いつかエレンが別の男と結婚し、子供を生むだろう。その子供が成長したとき、エレンから奪って…殺してやろう。それまでエレンがどこへ逃げようとも、カーニバルはアメリカ中を廻る。ここ(カーニバル)には、彼女の子供たちもかならずやってくるはず…と。
で、第1部はエレンが別の男性と結婚し、生まれた娘エイミーが17歳になっている…ところからはじまります。エレンは厳格なカソリック教徒ですが、昔子供を殺した罪悪感から逃れられず、酒浸りの日々。エイミーは自分を縛りつける母親が当然理解できません。反発するようにボーイフレンドと何度も寝たうえ、妊娠までしてしまいます。映画ではカーニバルでびびらされながらも結局親に迎えにきてもらう10歳の弟ジョーイも、小説ではエイミー同様、厳しいだけの母親から逃れたいと反発する様が描かれています。
一方でコンラッドはというと、カーニバルを訪れる子供の中にエレンと似た子がいると、エレンの子かを占い師の二番目の元妻(ジーナ)に確認させる…ということを繰り返していました。同時にガンサー(映画に出てくるフリークですね)が、カーニバルを訪れる女の子を次々襲い、殺していく。コンラッドはガンサーの凶行がばれないように後始末をします。自分の息子のため…というのもありますが、ガンサーはコンラッドの復讐の大事な切り札だったからです。そう、エレンの子供をガンサーに襲わせることを考えていたから…
と、ここまで長々とエレンの苦悩と同時にコンラッドの妄執が描かれていきます。実際の映画でのスラッシャー場面は、第3部で繰り広げられますが、ほんの数十ページなんです。小説としての見所は、エレンもコンラッドも根本のところでは同じことで悩んでいたと、読者にはわかります。そして娘のエイミーもカソリックの教えに縛られ、自己否定が厳しくなっていきますが…ラストの殺戮場面をくぐり抜けた後の彼女の心がどう変わったか…ですね。
さすがクーンツ、もうこれは別の作品と言ってもいいぐらい。と言いつつ、じつはクーンツ苦手で、あまり読んだことがない私です(笑。