4匹の蝿(1971年 イタリア)
ダリオ・アルジェント信者(?)なのに、ようやく見た次第。『歓びの毒牙』『わたしは目撃者』に続く、初期傑作。 ……が、やはりジャーロはジャーロ、アルジェントはアルジェント、というわけで(?)、ツッコミどころ満載なので、うるさくならない程度にツッコミながらの紹介。細かく書いたので長め。
主人公ロベルトはドラマー。1週間前から妙な男に後をつけられたり、見張られているのを感じていた。ある夜、我慢できなくなったロベルトは男を逆に追いかけ、廃墟の劇場へ(この劇場もイイ感じ)。男はロベルトの追及になぜか逆ギレして、ナイフを取り出す。もみ合ううちに、ロベルトは男を刺してしまう。
上の方からライトを向けられたロベルトは、妙な仮面(不気味!)をかぶった人物がカメラを向けているのに気づく。この場面を撮っていたのだろうか、すぐにどこかへ姿を消してしまった。
翌日、身元不明の男の遺体が発見された記事を新聞で見るロベルト。直後に郵便が届き、中には昨晩殺した男(カルロ)の身分証が入っているだけだった。自宅でパーティをひらいている最中、殺害場面の写真を見つけるロベルト。脅迫者は友人の中にいる?
しかし、この脅迫者の意図がわからない。金を要求してくるわけでもなく、夜中に自宅へ侵入し、ロベルトの首を絞めようとする(暗がりで誰だかわからないのはお約束)。が、「まだまだ殺さない」と笑って言い残し、立ち去った。妻ニーナに追及され、やむなくロベルトは全てを話す。それを別室で聞いているお手伝いの女性。
ロベルトは友人ディオメーデに相談(この男のキャラも強烈だけど、その後まだまだ濃い人物が登場するよww)。ディオメーデはアロージオという探偵を紹介してくれるが、ひとまずはこの友人と”教授”というあだ名の変な男が、ともにロベルトの家を見張ってくれることに。
途中、ロベルトが見る夢(サウジアラビアの処刑場面)や男の罵り声の中、精神病院の個室に入れられる回想(犯人のもの?)がさしはさまれて、不気味です。
お手伝いさんが犯人に気づいたらしく、お金を要求する電話をしている(電話線を伝って犯人の家へつながるカメラアングル…凝りすぎ)。待ち合わせしている公園で、あんのじょう、お手伝いさん殺されます(迷路のような公園をひたすら逃げ惑う場面はイイ)。
なんか急な感じですが、ダリアという美女が登場(ニーナとは違うタイプ)。ちょっと困惑してるロベルトの態度の理由は後でわかります。お手伝いさんが殺され、ニーナは警察に行くか、この家を出ようとロベルトに提案するが、人殺しをしてしまったから警察には言えないとロベルト。それをうっかり入ってきたダリアが聞いてしまった感じ(お約束)。
ここでびっくり、カルロ登場。殺されたんじゃ? 自宅で誰かと話しています。そう、犯人に頼まれて、オモチャのナイフ(刀部分が引っ込むやつ)で、刺されて死んだフリをしていたのだ。が、お手伝いさんが殺されたのを知り、もう付き合いきれないと言い出す。…もちろん、犯人に殺されました。
ロベルトが車に乗ろうとすると、「これで最後、お前の番だ」と書かれた紙が置かれていた。警察に行きかけるが、やはり行けず、かわりに訪ねたのは私立探偵のアロージオのところ(このアロージオのキャラがダメ押しで強烈 。①オネエ②大食い③今まで解決した事件が一つもない)。アロージオはロベルトにいくつか質問すると、しばらく裏でいろいろ探ってみると立ち去った。
家に戻ると、警察が訪ねてきていて、ニーナが対応していた。ニーナはもう我慢できないので家を出ると。ロベルトは解決するまで残ることに決めた。
そこへ入り込むダリア。ニーナのいとこで親友らしいのですが、前からロベルトが好きだったよう。あからさまに誘って、肉体関係に…。
ロベルトから家族や関係者の写真などをもらって、いろいろ紙に書きながら整理しているアロージオ。真相に気づいた? ロベルトに電話し、「ある類似点に気づいた。”ヴィラ・ラピディ”を知ってるか?」 ロベルトが答える間もなく電話が切れる。
(以下、いよいよネタバレです。ラストまで書くよ)
ヴィラ・ラピディ神経療養所を訪ねるアロージオ。おそらく犯人のことを聞いている。
・3年間入院していた ・殺人の妄想があった ・父親が死ぬと症状が消えた
さらに街で聞き込みを続けるアロージオ。彼を部屋から見下ろす犯人目線。いよいよその建物に入っていくアロージオ(同じくオネエな管理人との会話がウケる)。犯人らしき人物が出て行ったのか、アロージオ後を追う。
地下鉄の駅で見失いかけるが、トイレに入ったのに気づく。個室をひとつひとつ調べていって、逆襲される。アロージオ、薬品を注射され、無残に死亡…(なかなかにイイ味出してたキャラ、残念!)。
アロージオが殺された事を新聞で知ったロベルト。再びディオメーデや教授と会って相談(なぜか棺おけの展示会場で)。ディオメーデは犯人が殺人に快楽を覚えるパラノイアかもしれない…となぜか的確に分析。
自宅で待つダリア。殺される気配を感じたのか、地下室に隠れていたけれど…残念、殺されてしまいます。
ダリアを前に悲しみにくれる家族。警察がロベルトに許可を求める。
「死ぬ直前に被害者が見た映像が網膜に数時間残っていることがある。それを見る方法があるので試したい。ドイツやアメリカではすでに行われている手法で…」(←マジか?)
って、いきなり目玉(グロイ!)にレーザーらしきものをあてて…出てきた映像は…蝿が4匹。ロベルトに思い当たるふしはない。
銃を用意し、自宅で犯人を待つロベルト。現れたニーナ。ここから逃げるよう、ニーナともみ合ううちに彼女のペンダントが服から飛び出す。ペンダントヘッドにはガラス玉の中に1匹の蝿が閉じ込められていた(ど~ゆ~デザインじゃ。悪趣味)。それが左右に揺れて…4匹の蝿に見える。犯人はニーナだと悟るロベルト。
ニーナは語る。父親は男の子が欲しかったので、ニーナに男の格好をさせ、さらに暴力も振るった。反抗したら、精神病院に入れられ、「お前も母親と同じ精神病だ」と。苦しみの入院生活の途中で、父親は死んでしまった。復讐したかったのに。
ロベルトはその父親とそっくりだったのだ(復讐のために、結婚したってか?)。アロージオは父親の写真かなんか見て、気づいたのかな。
肩、脚と撃たれたロベルトですが、すんでのところでディオメーデが入ってきて、ニーナは逃亡。
「夢の意味がわかった。処刑されるのは僕じゃなくて…ニーナ!」
車で逃げるニーナ。思いっきり前方不注意で、トラックの後方に突っ込み、首が切れて、飛びます(フロントガラスが粉々に砕け散る様を超スローモーションで撮るアルジェントのこだわり場面…なぜ?と聞いちゃいけません)。
エンドクレジット…
犯人がニーナだなんてすぐわかるよ~と言うなかれ。それがジャーロなのだから!